令和5年10月、生活保護基準の改正に伴い、
最新版の生活保護自動計算ツールをリリースしました。
生活保護基準額は、生活保護受給者世帯と低所得者世帯の消費不公平を無くす必要があります。
不公平を無くす為に生活保護基準は5年に1度の感覚で見直しが行われており、最新の見直しでは令和5年10月に新たに改正されました。
生活保護費は生活扶助費に各種加算額を足した合計の金額で算出されます。
今回の改正では、生活扶助基準の計算方法と参照する値に変更がありました。
生活扶助基準とは、食費や被服費、光熱費などの日常生活に必要な経費に対応する扶助の基準費の事を指します。
生活扶助基準の具体的な金額は世帯単位で決まる事になっており、【第1類費】の食費等の個人的費用と、【第2類費】の光熱費等の世帯共通的費用を合算して算出されます。
今回は具体的な算出方法として、愛知県名古屋市に住む52歳女性、子ども2人(中学生1人、高校生1人)の3人世帯の場合を例にして計算していきます。
まずは生活している市町村の等級を確認します。厚生労働省がだしている等級区分を見て、愛知県の名古屋市の等級が【1級地-1】である事が確認しておきましょう。
生活扶助基準額を出すには、生活扶助基準(第1類)と生活扶助基準(第2類)を算出する必要があります。まずは1人当たりの生活扶助基準(第1類)を確認していきましょう。
ここでは厚生労働省の生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和5年10月)を見ながら確認していきます。1ページ目の左上にある生活扶助基準(第1類)の表を見て【1級地-1】の列を確認します。
52歳女性は「46930」、子供2人はそれぞれ「49270」である事が確認出来たら、これらを全て足し合わせて「145470」という数字を算出します。
この値に逓減率(世帯人数が3人の場合は「0.75」)を掛けた値が生活扶助基準(第1類)の基準額となります。今回の場合は「145470」に「0.75」を掛けて「109102」という数字になります。
次に生活扶助基準(第2類)の基準額を確認しましょう。生活扶助基準(第2類)の表を見て【1級地-1】の「3人」世帯の表を確認すると、生活扶助基準(第2類)基準額が「44730」である事が分かります。
生活扶助基準(第1類)の基準額「109102」と生活扶助基準(第2類)の基準額「44730」を足し合わせると「153832」≒「153840」になり、最終的な生活扶助基準額「153840」を求める事が出来ました。
次に加算額を求めていきます。「特例加算」とは1人当たりに1000円支給される加算額であり、今回の世帯人数は3人なので「1000」×「3」で「3000」になります。
「経過的加算」は2ページ目の「生活扶助本体に係る経過的加算」で確認します。今回の例は「3人世帯」の欄を確認すると分かります。【1級地-1】の「3人世帯」の表を確認すると、子供一人当たり「530」円支給される事が分かります。子供の人数は2人なので、経過的加算は「530」×「2」で「1060」となります。
今度は加算額を確認します。今回の例では母親が1人なので、母子世帯に該当します。母子世帯で1級地の場合、子供2人の加算額は「23600」になります。
また、児童を養育する場合、児童1人につき「10190」なので、「10190」×「2」で「20380」も加算されます。
最後に「住宅扶助基準額」を求めていきます。住宅扶助基準額は都道府県や市によって限度額が変わってきます。今回神戸公務員ボランティアのサイトを参考にして確認すると、名古屋市で「3人世帯」場合、の住宅扶助限度額は「48000」である事が分かりました。
上記の1と2によって生活扶助基準額と各種加算額を全て算出する事が出来ました。これを全て足し合わせると生活扶助基準額「153840」+ 特例加算「3000」+ 経過的加算「1060」+ 児童養育加算「20380」 + 母子加算「23600」+ 住宅扶助基準額「48000」= 「249880」になります。
これで今回例にした世帯の最終的な生活保護費は「249880円」になる事が分かりました。
生活保護の推定値を計算する事はかなり複雑でややこしいと思います。簡単に自分の生活保護費知りたい方はこちらのツールをご使用ください↓。
令和5年10月以降の計算方法では、それ以前の計算方法と比較して生活保護の支給額の減増を比較してみたいと思います。
令和5年10月以前の計算方法は割愛しますが、厚生労働省の生活保護制度の概要等についてを参考に算出しています。
世帯の例 | 改正前 | 改正後 | 差額 |
---|---|---|---|
東京都世田谷区に住む37歳の単身世帯 | 130120円 | 130120円 | 0円 |
神奈川県横浜市に住む62歳の単身世帯 | 128880円 | 128880円 | 0円 |
東京都多摩市に住む58歳、 55歳、高校生1人の3世帯 |
235350円 | 235600円 | 250円高い |
愛知県名古屋市に住む57歳、 中学生1人、高校生1人の3世帯 |
249750円 | 249880円 | 130円高い |
今回、大都市を中心にランダムな世帯で比較したところ、生活保護の支給額にほとんど変わりはないが、支給額が若干増えてる世帯がありました。
近年の円安や物価上昇の影響を受けて、支給額に反映されたものだと考えられます。